今日は私(板東)とお客様のお話し第2弾になります。
ある日の早朝、国際電話のベルが鳴りました。
それは、2年ほど前、アメリカに日本人学校の教師として、奥様とまだヨチヨチ歩きのお子様の3人で赴任されたKさんのお主人からのものでした。
Kさんは遡ること赴任の決まる1年ほど前に当社で住宅を新築されたばかりのお客様です。前々から赴任を希望していたらしいですが、この赴任は急な話でした。新築したばかりの家の管理を近所に住む奥様のご両親に委ねてアメリカへと赴いたのです。
電話の内容はといえば、新築のために購入した土地の前にある道路の一部が、奥にある敷地の持ち主と共有(共同所有)となっていたのですが、アメリカに行っている間に奥の敷地が転売されたことに関するものでした。
実はこの道路、Kさんが不動産屋から土地を購入するとき、「道路なのでここには建物は建たない」旨の説明を受けていたのです。ところが、奥の土地を購入した人は、それは道路では無く敷地の一部であると説明を受けて購入したために起きたトラブルです。
法律的な話は複雑なので詳しい説明は省略しますが、ようは奥の土地に家を建てる人はKさん宅の全面にある道路の一部を道路ではなく自分の購入した敷地の一部として不動産会社から説明を受けて購入したために、そこに自宅の門柱等を建てようとしていました。
その話を巡っての話合いがなかなか進展せず、悪いことに元々その土地の持ち主である不動産会社も逃げ腰で、なかなか連絡が取れず、アメリカで日本にある土地の心配をしても状況がよくつかめないため、不安は募るばかりとなってしまったのです。
どうも不動産会社が、手前と奥の顧客それぞれに自社に都合の良い説明をして販売してしまったことが原因のようなのです。
それから連日、ファックスやメールそして電話と、私とのやり取りが2か月近く続きました。
そんな中私が感激したことがあります。
遠く離れてアメリカの地に行ったKさんは、宿舎としてあてがられていたアメリカ現地の2×4住宅に住んでいましたが、日本で建てた自分の家とは比べものにならないほど、粗雑な住まいであるというのです。そこへ今回の事件です。
「もし建て替えることになったとしても、絶対板東社長でなくっちゃね」
電話口の向こうで興奮しながら話す声に、私は平静を装いながらも嬉しくなってしまいました。
信頼が信頼を産む瞬間でした。建築屋冥利に尽きるとはこのことでしょう。
幸い、奥の土地を購入した方も人柄の良い方であった為に、事なきを得たのですが、一時は新築間もない住まいを売って、もう一度違う場所に住まいを計画したいとまで考えておられたそうです。
無事日本に帰ってきたKさんを、社員全員で花束に思いを込めて出迎えました。
「お帰りなさいKさん。留守中のご自宅は微力ながらお守りできました・・・」
たぶん一生のお付き合いになるでしょう。これからも宜しくお願致します。