何を見るべきか
住宅展示場には様々な家具や調度品、あるいは住宅の周囲を取り巻くカーポートや庭(外構工事)が入っています。カタログの写真も同様です。
もっとも建売住宅や中古住宅を購入する場合は実物そのものですが・・・ここでは新築住宅のことについてのお話しです。
住宅展示場は、その建設会社の宣伝効果を高める為に、技術力や資産力を結集して造られているために、実際にあなたが購入しようするものとは遥かにかけ離れたものであるということです。
いくら説明の時に、「この家具はオプションです」「この家具は別途です」と言われても、一度目に焼き付いたものってはれないですよね。
さらに住宅展示場には生活感がありません。そこで自分がどんな生活をするのだろうという「物語」が描きにくいのです。またそう造られているのです。
日本に建てられている、大手メーカーの住宅展示場の平均総工費は約1億円といわれ、その展示場で実際に成約する住宅の平均金額は、2400万円前後といわれています。
「見えるものと買うものが別のもの」このことについてあなたはどう思われますか?
住宅展示場が一概に悪いという訳ではありません。インテリアのデザインの参考くらいにはなると思います。
でも、外観のデザインの参考になる住宅なんて日本中探しても、ほとんど見つかりません。流行歌のようなその時、その時の時流に合わせた奇をてらった外観の住宅、あるいは商業施設のようなケバケバしいデザイン・・・。
こんな住宅を良いと思って販売している業者は、歴史に住宅のデザインを学んでいません。消費者は初めて家を建てる人が多いため、何を見るべきなのかが分からないのです。そういうことより流し台がどうだとか、お風呂がどうだとか、そんなものばかりに注意がいってしまいます。
何を見るべきかが定まらずに、何となく見に行く度に、ベテラン営業マンに誘導されるがままの方向に注意点がいってしまうのです。
お手元に住宅の広告があったら改めてみて下さい。その紙面のほとんどが流し台やらお風呂やらの、設備機器に割かれています。
価値のある住宅、本当に愛着の出る住宅を探すなら、まず外観デザインの勉強をお勧めします。
外観デザインの参考になる建物を探すのだったら、史跡とか歴史的な建物とかユネスコ村とかを見学に行った方がよっぽどタメになります。住宅会社の都合で書かれたデザインのカタログや本ではなく、市販されている建物の歴史やデザインの本を見ることです。
仮にそれが何千円や何万円掛かったとしても、何千万の買い物をする訳ですから、それを出し渋っていては本物を見る目は養えません。
何を見るべきか、その目が大事です。
大量仕入れは安くはならない
住宅を大量に供給できる能力を持っている会社は、「材料を大量に仕入れているから我が社は低価格で供給できるんです。」という。
ところが、一般木造住宅において材料がしめる全体の金額比率は、わずか四分の一から五分の一しかないので、これをいくら大量に買ってきたとしても住宅全体の価格を20%~30%も下げることは到底出来ません。
むしろその事業規模を維持するために多く費用がかさみ、更に多重下請け構造になっているために、大量に供給して価格を下げられるはずが、高価格にならざるを得ない要因を作り出してしまっています。
大手メーカーの粗利は通常60%と言われていますが、その大半は自らを維持するために必要となっています。
大量に仕入れているから安く出来るというのは、こと住宅業界においては当てはまらないのです。
なぜなら材料以外に人件費や経費が何倍もかかるからです。人件費についても、腕の良い職人さんを雇って良い仕事をしようと思えば、それなりの賃金を払う必要があり、賃金をカットするのであれば、ある程度の技能技術を持った職人さんにお願いするしかなくなります。
大量に販売しているから、あるいは大量に仕入れているからというだけでは、事業規模により「差」こそありますが、計算上住宅のコストダウン数は数%~10%くらいです。その金額を下げる為にコストがそれ以上かかれば、実際の価格は下がるどころか、かえって高いものとなってしまいます。
大手メーカーや大手グループの持つ矛盾点です。安物を高い金額で買うことに喜びを感じる人はいませんよね?
比較するものを考える
よく広告に、坪幾らとか、従来より何割引きですとか宣伝したものがあります。でも何と比べて何割引なのか明確に宣伝したものはありません。
同じようなない内容の建物なら「多重下請け構造」をとっていない地場の建設会社は大手建設会社に比べ20%~30%以上は安く造ることが出来ます。特別なことではありません。
坪いくらと宣伝した広告、坪単価というものは建物の総額を面積で割ったものですから結果論です。同じ面積の建物でもその形状や構造、設備機器などその金額は大きく変化します。
同じ内容を比較させない為にその注意を、これまた設備機器やボルトやコンクリートの写真なんかを掲載して何でもかんでも入ってこの価格ですと強調します。
住宅は百円ショップでのお買い物とは違うのです。建設中はもちろんのことその後も一生その住宅会社と関わりを持って暮らしてゆくものでもあるし、また、そうあるべきものです。
なぜそういう金額で出来るのか、疑ってみることも必要なことです。
二十年近くの住宅業界の経験からいって、本当の意味でのローコスト住宅を提供出来る建設会社を私は知りません。
ローコスト住宅はローコストで造られているわけですから、ロープライスで販売されて当然でしょう。ハイコストなものをローコストで造れる、あるいは販売出来ることが求められているのであって、安物を安く買っても何の意味もないですよね?
今日まで実に多くの建設業者の方たちと交流をし、勉強会なども行ってきましたが、世間一般的に言われているローコスト住宅の多くには「科学的、合理的根拠」がありません。
「安物買いの銭失い」ということわざがあります。何を比較して、どういう理由で安いのかを納得して選択することです。