今から30数年前に、アメリカから日本い本格導入された2×4工法と呼ばれる輸入住宅は、きわめて「合理的」で「耐久性」があり住みやすく、デザイン性にも優れ、日本の気候風土にもマッチする素晴らしい住宅でした。
しかし、これらの意味するところが、よく理解されないまま世界にどこにもない「日本流2×4輸入住宅」が日本全国に普及拡大をし、今日に至ってしまいました。
アメリカやカナダに於ける2×4工法の家の概念や具体的な作り方を理解せず、ただ輸入した材料を使用しているから輸入住宅であるとの「誤解」が消費者のみならず、建設業者の間にも未だにあります。
正確にいうと「誤解」ではなく「知らない」と言ったほうが正解でしょうか。
50年~100年、更にその先へと世代を超えて住み続けることの出来る、良質で耐久性がある素敵な2×4住宅は、日本にその工法が導入されるときに「寸法」「材料」「組み立て方」「考え方」を日本流に置き換えてしまった為に、本来の2×4の特徴が活かされずにいるのが現状なのです。
その後数回にわたる建築基準方の改正が行われて現在に至っていますが、その「勘違い」「間違い」の根本的な部分は未だに手付かずのままです。
アメリカで1930年代に考案され発達した現在の2×4住宅工法はその後1940年代に大きな発展を遂げ、現在私たちが2×4と呼んでいる原形が出来上がりました。
この工法は第二次世界大戦中に鉄板の代用品として、アメリカで発明された「構造用合板」を主要材として造られる住宅です。
この合板は物理的性能だけではなく、耐水性能にも優れており、その合板に2×4という木材の断面が2インチ×4インチの骨材を沿えて張り付けることにより構造体を構成してゆくというものです。
当然その寸法は、「構造用合板」の合理的な約数、数倍が基準となり、それに合わせて2×4という骨材を張り付けていくという原理によるのですが、日本では2×4という骨材に合わせて構造用合板を使用するという手法を取ったために、強度や生産の合理性に於いて、著しく劣った世界のどこにもない奇妙な2×4住宅が出来上がってしまいました。
結果として「強度」や「耐久性」「合理性」「価格」「環境問題」などなどの様々な面に反映されることになって、同じようなものは造れても同じ価格では造れないという矛盾や、不可解さを生み出すことになってしまったのです。
日本で見た輸入住宅
バブル経済の絶頂期には、私自身も設計という立場から様々な住宅展示場や町中に建てられた輸入住宅なるものをずいぶん見て回りました。
その時の印象と言えば、輸入住宅といってもただ派手な飾りつけをして、輸入した建築材料を使っているから、輸入住宅であるというお粗末なものが多く、外観にしてもアメリカやヨーロッパの伝統的なデザインとは無縁のものでした。
大手メーカーの輸入住宅の展示場でさえ、一過性の思い付きで考えられたとしか言いようのない陳腐なデザインのものがほとんどでした。
また、そのころは「何LDK」といって部屋の数が多いことが豊かさの象徴のように考えられていたこともあって、本来輸入住宅の魅力のひとつであるオープンプランニングという開放的なプランニング計画が導入されておらず、どこへ行っても間仕切りだらけの建物ばかりでした。
これでは、「構造」的に考えても、接合部分が多く発生するために将来、増改築などを必要としたときに不具合が生じて強度に問題がおきてしまいます。
2×4住宅が従来の在来工法と異なる点のひとつに、壁全体でその荷重を支える(壁組工法)ということが挙げられます。その為に在来工法(軸組工法)に比べて外周を取り囲む壁(外壁)によって強度が保たれる為に、間仕切壁に頼らず大きな空間を作ることが出来るのです。
ところが、折角の2×4工法もその長所を活かせず、その造り方は2×4という材木を使った軸組工法であり、言い換えるならば「在来工法的2×4住宅」とも言ううべき一種異様な住宅が日本中に蔓延していたのです。それは、少しばかり姿を変えただけで今も続いています。