一般的に住宅の外周を取り囲む壁にはバブル全盛期の頃、断熱材としては住宅の「外周の壁の厚み」の中の空間を利用してガラス繊維を主原料とした「グラスウール」と言われるマット状の材質のものが入っていました。
これは基本的に私たちがジャンパーを着るのと同じです。異なるのは、衣類や布団はおひさまに干す事が出来ますが、壁の中に入ってしまった布団は簡単には取り出せません。家の中からは様々な要因で湿気が発生し、これが部屋の内側の石膏ボードという室内に面した面材を通して、壁の厚み部分にある断熱材の中に侵入します。2×4工法は当初から気密の重要性を指摘していました。
この図の中で防湿フィルムと記載されているのが断熱材の中に水蒸気を侵入させない為の障壁となるのです。断熱性能を長期間にわたって維持させるためには、室内の水蒸気を外壁の内部の断熱材に侵入させないことが大事なことです。万が一微細な水蒸気が侵入しても構造用合板の通気孔と外壁材の間に設けられた通気層により蒸気は外部に排出されます。また、「カビ」は温度、湿度の条件で発生し、この菌が壁の中の酸素を吸収し酸欠状態となり壁の内部の腐れを更に助長させます。
外部の内部(断熱材が入っている部分)にこの状況を作り出せないためにも、出内側からは水蒸気を侵入させない、室外に向かっては水蒸気を放出する工夫が必要となります。
25年ほど前には、在来とかプレハブ、鉄骨、2×4等の住宅建設の工法に関係なく、やみくもに断熱材を厚く施工することが省エネにつながるとして全国的に行われていました。
断熱材はその内部に蓄積された空気の量が「断熱性能」となるのですが、この頃は壁の厚み以上の断熱材を「ぎゅうぎゅうづめ」に押し込んで「断熱性能」を自慢していた建設会社も少なからずありました。
断熱材は壁の厚み以上に圧縮されてしまうとかえって断熱性能の効果を半減させることになってしまうのですが、当時これらの知識を持っている建設業者はほとんどいなかったように思います。
特に寒冷地の北海道でしゃ、この「断熱性能向上運動」が大手住宅会社主導でさかんに展開され、「ぎゅうぎゅうづめ」の断熱材や、気密を取るためと称して本来不適当な温室用のビニールを使って気密工事が行われた為に、建築後10年も経たないうちに外壁が崩れ落ちるという事件が相次いで起こり、一躍社会問題になりました。これは断熱と湿気の関係がよく理解されずに工事が行われた為に、壁の中に「ナミダタケ」というわれる一種のカビが発生し、住まいを腐らせてしまったことによるものです。
後に「ナミダタケ事件」と呼ばれて建築業界に衝撃を与えました。
本物の2×4住宅は、日本に導入される遥か以前から、「断熱・気密」の重要性を指摘し、この問題にもきちんとした技術や対応策を打ち出していました。
「ナミダタケ事件」も、海外から2×4住宅を導入した時点で、謙虚に学んでおけば起きなかった事件とも言えるのではないでしょうか?